今後多病多死社会を迎えるにあたって、在宅医療の需要はますます増えています。
在宅医療の担い手は、一般開業医が外来の 片手間に行っているばかりでなく、在宅医療が専門のクリニックも多く登場してきました。
在宅医療を担う医師の会としては、すでに 日本在宅医学会や日本在宅医療学会などがあり、その活動も発展してきました。
東京大学高齢社会総合研究機構では、柏を中心に、一般開業医が在宅医療を行えるようになるための仕組みづくりを進めています。
東大在宅ドクターズネット設立
東京大学高齢社会総合研究機構では、柏を中心に一般開業医が在宅医療を行えるようになるための
仕組みづくりを進めています。
私たちの取り組み
病院勤務医や大学病院医師の在宅医療に対する理解は、必ずしも進んでいません。
特に、在宅医療専門のクリニックでは、 その性質上、もともと病院勤務医であった医師が在宅医療に入っていくというルートが多いと考えられ、むしろ、病院勤務医に、在宅医療を 経験してもらう場を作っていくことの方が重要と考えられます。
最近の私たちの取り組みとして、東大病院の老年病科、アレルギー・リウマチ内科の若手医師に、医療法人社団康明会での在宅医療を 非常勤で体験してもらっています。
その結果、多くの若手医師が在宅医療に関心を持ち、中には、「大学院を卒業しても在宅医療を 続けたい」と、長期的にやりがいを持ち頑張っている医師もでてきました。特に彼らの多くが大学院生として基礎研究をしており、 楽しい臨床の唯一が在宅医療となっていることもありますが、そうは言っても、今後の在宅医療の担い手として成長してくれるのであれば、 喜ばしいことです。
在宅医療と病院医療
在宅医療と病院医療を比較すると、質的な違いが多くあります。
例えば、救う医療と寄り添う医療の違い、医師同士のチーム形成 とコメディカルとのチーム形成といったところです。
在宅医療では、患者・家族とのかかわりが病院より深かったり、濃厚な医療を受けずに 亡くなっていく終末期高齢者の自然な姿など、病院では得られない経験ができます。そして多くの医師が経験するのは、在宅という環境の 治癒力ともいうべきものもあります。
東京大学では、その関係者やOB、OGに、在宅医療のリーダー的存在の方が多数います。その資源を有効に統合し、このような、 在宅医療の良さと限界を、東大病院の若手医師に伝える仕組みが必要だと考えられます。また、そのような努力は、単に医療連携が 進むということばかりでなく、優秀な在宅医療の担い手が増えることにもつながっていくのではないでしょうか。
また、在宅医療では、医師の個人プレーに頼らざるを得ない部分もままあり、それを支える組織にも限界があります。在宅医療を担う複数の 医療機関が、ビジネスではなく、情緒的な連携を図り、いわゆる相談できる仲間を持つということは、在宅医療を担う医師のメンタルヘルスに 有効ではないかと考えられ、診療の質の向上にも寄与すると考えらえます。